君は私の人生の、輝く太陽。
「・・・もう大丈夫。ありがとう!」
私は直斗に満面の笑みを見せた。
「行くか!」
私たちは並んで家に向かって歩く。
家まで10分ぐらいかかるはずなのに、とても早くついた気がして。
直斗に気付かれないように、家の前で小さくため息をついた。
「じゃあな!なんかあれば言えよ!」
「うん!またねー!」
私はドアを開け、家の中に1歩踏み込んだ。
変わらない玄関。
変わらない香り。
「おかえりなさい、涼香」
変わらないお母さんの声。
それでも、涼香がいない。
"私"がいない。
「ただいま!」
笑顔を見せろ。
何もないように笑え。
気づいて欲しい、おばあちゃんの家に住みたいなんていう感情がバレないように。
「・・・涼香?」
玄関でぼーっとしていた私に、お母さんが不思議そうに声をかけた。
お母さんの声にハッとする。
「・・・なんでもない!ちょっと懐かしかったっていうか・・・。変わんないなって思って!」
「そんな急に変わらないわよ。」
変な涼香、と言いながらお母さんは優しく、嬉しそうに笑った。
この調子でいけば大丈夫。
きっとバレない。
このまま涼香になろう。
"私"を捨てるんだ。
分かっているのに、お母さんに気づかれないことが悲しくて。
でもそんな表情は見せちゃいけない。
私は涼香。
心の中で繰り返し呟きながら、リビングに向かった。