Sだけじゃ、たりない。

【First】二学期

出会いは、唐突に。

「奈々！起きなさい！！今日からまたガッコウでしょ！」


朝から甲高いお母さんの怒鳴り声。

え…ガッコウって…？ガッコウ…学校！？


「えっ！今何時！？」


私は勢いよくベッドから飛び起きて、時計を見た。

時刻は7時32分。


「ちょ、ちょっとお母さん〜やばい！寝坊した〜！！」


クリーニングに出しておいた綺麗な制服に急いで着替え、猛ダッシュで階段を駆け下りた。

ああ、もうめんどくさいなぁ寝癖なんか…！

寝癖をごまかせるように、今日の髪型は三つ編みに即決。


「髪の毛が長いと、縛っちゃえば寝癖をごまかせるからいいんだよね〜」


「なに訳わかんないこと言ってるの、急ぎなさい〜！」


三つ編みをしながら呟いた私に、お母さんがまた怒る。

これが、私【坂下 奈々】のいつもの朝。

決して優雅な朝とはいえないが、朝から慌ただしいくらいが【坂下家】には似合っていると私は思う。


「行ってきまぁーす」