クリスマスが終わる瞬間も
「気づいてへんかったん、ごめんな。ちゃんとこれからは直人のこと、考える」
「……ん」


こくりと子どものように頷いた直人の様子にふにゃりと頬を緩める。予想もせんかったクリスマス、波乱万丈やなぁと思って笑う。

さあ、そろそろ退いて?と顔の横についた彼の腕をぺしぺしと叩けば、ちゅっと軽い音。遅れて唇を吸われたと気づいた。


「なっ……」


こいつキスしやがった!なにしてくれてんの!

なんか言わな、と頭のどっかで思うけど言葉にはならへん。現実やけど受け止めたくない!


「暴走するくらいの勢いやないとあかんってようわかった。俺も、これでもお前の幼馴染やし似た行動したっておかしないやろ?」


おかしいわ!


「とりあえず、一晩かけて優しくする」
「なんの決意表明やねん!」
「そんで、クリスマスが終わる瞬間も、その先もずっと、離れられへんくらい優しくするから。早く俺に落ちてくれ」


珍しく薄く唇を上げて、直人が笑う。大人になった彼の見慣れたはずのスーツ姿に体温が急上昇。赤いネクタイをほどく指先から目を離せへん。そして彼は、うちの髪をするりと撫でた。


そういうこと言われたら、うちは単純やしどきどきしてまう。思い出をひとつひとつ数えて、その時の直人の気持ちを考えるだけで、心臓は跳ね上がる。

やめて!こんなあっという間に落とされるつもりなんてないねんて!


「唯」


自分の名前を呼ばれただけで動揺した自分が恥ずかしく、誤魔化すようにぶっきらぼうな返事をした。すると気にならんかったんか、直人は「言ってへんかったけど」と言葉を紡ぐ。


「好きや」
「っ!」


色鮮やかなツリーに、とびきりのディナーとホテル。今までで1番のクリスマスやったはずやのに、来年はきっともっと特別になる。

次のクリスマスは、ただの幼馴染と過ごすことはないんやろうな。

真っ赤な顔を隠すこともできず、そんなことを思いながら、うちはもう1度降りてくる唇を見つめていた。
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