悪人きどり
善人もひっくり返して悪人となる

 「泣いているのですか?悲しいことがあったのですか?」

 随分と無粋なことを聞いてくると思った。

 見れば一目でわかる自身の醜態を、言葉にするこの無礼者。

 名前を竹谷 栄(たけたに さかえ)。

 学校の数学教師。

 数学教師に対して偏見はないけど、この男は人の事を本当にわかっていない。

 無礼で無粋で失礼極まりなく、思ったことをすぐ口に出す嫌味男だった。

 「深夜のファミレスに呼び出して泣き顔を見せるなんて性質が悪い。私がどんなにあなたを心配するかあなたは想像も出来ないことでしょうね」

 他の生徒に見つからない様に、五駅も離れたファミレスのそれでも人目を気にした端の席で、先生はため息交じりに注文したコーヒーを啜る。

 「…ねぇ、なんで先生は私によくしてくれるわけ?」

 聞けば少し怒った様に視線を向けられた。

 睨まなくてもいいじゃんと思うも、先生は視線を逸らさず私を見つめ続ける。



 
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