不器用な彼氏

あれから約1週間が経つ。

この間、なるべく今日のことは考えないように過ごしてきた。
自宅でも通勤途中でも、仕事中も帰宅時でも、考え出したら何も集中できなくなりそうだった。

おそらくアイツも同じ想いだっただろうと、推測できる。

…ハッキリと、もう一度言おう。


“今夜、俺はアイツ(菜緒)をこの手で抱く”


ガッつくつもりは毛頭ない。

そもそも、アイツを抱くことは、己の欲情を吐かす為なんかじゃない。
どれだけこの時を待ったのかわからないのだから、性急にことを進めるなど勿体のないことだ。

ありったけの時間をかけて、たっぷり俺の想いを注いでやる。

正直、理性がどこまで持つかわからないが、出来ればアイツの方が根を上げるまで、善処するつもりだ。
こんな風に女を抱くなど、アイツに出会わなければ、思ってもみなかった。

想像するだけで胸が高鳴る。

無論、アイツのすべてを手に入れるまでは、まだまだ充分時間がある。
焦らず、ゆっくり時を待つ。

そもそも、その前に、先ずは、アイツと過ごす時間を、たっぷり楽しむことにしよう。


…菜緒、覚悟しとけよ。
俺が、与える、十数時間後に、訪れるだろう至極の時間を…。
< 152 / 266 >

この作品をシェア

pagetop