雪の華
恋雪

-ピコン-

「着いた」

「今行く‼」

こっそり家を抜け出す…

そっと、足音立てないように…


-ガチャ-


脱出成功。


このスリルがたまらない‼

「お待たせ‼」

-バン-

どんどん遠ざかる家。

家を抜け出し乗り込んだ彼氏の車。

彼氏は21歳。

私は17歳…。


会える時は必ず抜け出す。

彼氏に会いたいから…。


一番ほっとする。

毎日話しても飽きない。

毎日でも見ていたい顔も…毎日聞きたい声も…。

「さゆきはちゃんと勉強してる?」

「してない‼」

「また、怒られちゃうよ?」

「いいの‼その話しはなし‼」

私の名前…咲雪(さゆき)。

彼氏の名前…皇雅(おうが)。


私にスリルを教えてくれたのが今の彼氏。

自由になりたい。

早く大人になりたい。

少しでも彼に近づきたい。


出会ったきっかけは、友達のお兄さんの友達が皇雅。


最初は全然興味なかった。

ただ、遊んでて楽しかっただけ。

高校生の私が少しだけ大人になったような感じが楽しかった。

ケータイの番号交換して、毎日連絡くれたり、時々会いに来てくれた。

私は少しずつ惹かれていった。

そんな時に告白された。

「俺は咲雪が好きだよ…likeじゃなくloveね」


出会った時には皇雅には彼女がいた。

だから興味なかったし、どうにかなりたいとか思わなかった。

毎日の様に連絡くれたり、時々会いに来てくれる事が不思議で…

「彼女さんは?」

「別れた」

「急にどうしたの?」

「何でかな…別れたくなったから」

「そっか…」

私と会って1週間後。

付き合うまで二週間。

「私もloveだよ…」

「完全に俺の一目惚れ」

こうしてスタートさせた恋愛。


皇雅は実家暮らし。

家族に会わないように部屋に駆け込む。

お母さんに怒られた事があってからいつも夜に会う時はコソコソと行動する。

「これ飲む?」

「うん‼」

私の好きなピーチティー。

「ねぇ…キスして…」

唇を合わせる…

近づいてくる顔…私は目を閉じる…

それだけで体が熱くなる…

その唇は私の首筋に落ちてくる…

私は彼の背中に手をまわす…

快感を声にできない…だから我慢する…

時々我慢できずに声にでてしまう声に、彼は激しく攻めてくる…

私は彼のたくましい腕にしがみついて夢の中へ…

抱かれながら耳元で「愛してるよ」と囁いてくれる。

私も「愛してるよ」と囁く…。


この瞬間も好き…

彼の優しい目も、唇も、首筋も、たくましい体も腕も全て好き…ふわっとするタバコの香りも…たまらない…。

離れたくない。

だからワガママ言わない。

皇雅の職業は運送業。

忙しい時期はこうして会えない。

最初は「会いたい」とスネたりしていた。

皇雅は「仕事もあるし、理解してくれないと続けられないよ?」

そこが「学生」と「社会人」の違い。


だからルールを決めた。

嘘はつかない。
お互い不安に思う事は話す。
ケンカを持ち越さない。

この3つ。

「別れたくなった」なんて言われたくないから。

我慢だって必要だし、そうやって大人になっていく。

子供扱いされたくないから、精一杯…背伸びして彼氏についていく。

今では私の方が彼に夢中だ。


皇雅の過去は知らない。

聞かない。

私も話さないし、聞いてこない。

「今、過去は必要ない」

皇雅はサバサバしているから、切り換えが早い。

あっさりした性格も好きだけど…そこが不安にもなる。

彼の理想に近づきたい…。

早く大人になって、自由になりたい…それが私の一番の願い。


明日の約束も未定…。

それでもいいから…ワガママ言わないからずっと「彼氏」でいてほしい。


夜中の3時、私は家に送ってもらう。

行く時は明るかった家からの道。

帰りは寂しくなる…。

「寝坊しないでね?」

「皇雅…」明日も会える?

そう聞きたかった。

でも…

「ありがとう…またね‼」

「学校頑張れ‼」

「わかった…」

車が見えなくなるまで手を振っていた。

2度と会えない訳でもないのに…。

私は家の鍵をポケットから出し、鍵をそっとまわす。

-カチャカチャ-

「よし…」

そっと部屋に戻る…足音立てないように。

皇雅のメールを待つ。

-ピコン-

「今着いた。おやすみ」

「おやすみ…大好きだよ」

さりげなく愛情を確認する…。

「俺も大好きだよ。」

「おやすみ」

「おやすみ」

恋愛に不安は付き物だから…

愛するが故に不安になるものだから…

この感覚も悪くないよ。

心地いい痛みだから…。
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