雪の華
淡雪

-ガチャ-

家の玄関に入った瞬間…

-バチン-

お父さんに叩かれた。

「何してた?どこ行ってた?」

それでも「どこだっていいじゃん‼」

「いい訳ないだろう‼いい加減にしろ‼」

「何をいい加減にするの?」

「男遊びもいい加減にしろ‼」

「遊びじゃない‼本気だし‼」

「親に逆らうのか?」

「私を縛りつけて楽しい?言う事聞いて勉強してるじゃん‼家族の団欒だってないし、コミュニケーションのない家で何してろって言うの?」

「してるだろう?」

「してないじゃん‼いつも説教ばっかり…私の話し笑って聞いてくれる人この家にいる?いないじゃん‼」

そう言って部屋に閉じこもった。

どうぜ伝わってない。

私の言った事も駄々をこねた子供のいい訳。


どうせだったら…もっと温かい家に生まれたかった。


エリートな人生が偉いの?

そんな人生私にはいらない。


-コンコン-

「咲雪…お母さん。入っていい?」

「何?」

「入るね…」

「説教ですか?」

「違う…お母さん、気づかなかった。咲雪とちゃんと話してなかったね…」

「………別にいいよ。小さい頃からそうだし…」

「そうだね…いつからかな…お母さん、間違えてた」

「………」

「ごめんね…咲雪の話し聞くようにするから…」

「………」

「せめて、行き先だけは教えて?」

「わかった…」


今になって親に甘えるとか無理。

甘え方がわからない…。


都合いい時は「子供」

都合悪い時は「子供じゃないんだから…」

何だよ…それ…。


大人は本当に勝手だ。


親の理想の押し付けとかいい加減にしてほしい…。


話しを聞いて欲しくて茉叶に電話した。

「はい」

「今…暇?」

「暇だけど、どうした?」

「聞いてよ…」

ここから1時間…愚痴を聞いてもらった。

「親なんてそんなもんだよ」

茉叶の答え。

私より大人だね…。

「私が悪い?」

「悪くないよ…気持ちわかるし。うちは自由だから、咲雪んちは大変だと思うよ?」

「正直…辛い」

「そっか…」

「話し聞いてくれてありがとう‼ごめんね‼」

「いつでも聞くよ」

「じゃあね…」

すっきりしない…多分、誰に話しても。

そんな時は寝る‼

長い1日に終わりを告げた。

騒いだって変わらないんだから…。

考えるだけ無駄。


部屋の電気を消した。

何も見えない暗い部屋。


光るケータイ…メール…

-元-はじめ…お兄ちゃん。

「ケンカしたんだって?」

「別に。出来損ないだから‼」

「俺も変わんないけどな…」

「慰めありがとう‼はじめ」


要領がいい長男。

お母さんはすぐ元に何でも言う。

そうやって探りを入れようとするんだよね…。


皇雅の事もそう…。


止めてほしい。


言えない空気にしたのは他の誰でもなく、お父さんとお母さんなのに。


イライラした私は真っ白なノートを破いて部屋にばらまいた。


楽しい…何も考えていない…この時が…無償に楽しい。


それでも朝は来る。

「学校、行ってくる…」

「気を付けてね」

返事なんてしない。


今日は学校に行かない。

行きたくないし…皇雅の家の前にいた。

今日、仕事休みなの知っていたから…。

ケータイを鳴らす。

「はい?」

「今…家の前」

「学校は?」

「行かない…」

「上がって来なよ」

「うん…」

皇雅のお母さん…

「おはようございます…」

なぜか涙が溢れてくる…

「泣いて…どうしたの?」

「ごめんなさい…朝早くに…」

怒られると思っていた。

私の手を握るお母さんの手。

「温かい…」

「えっ…?」

「お母さんの手…温かい…」

子供のように泣く私をリビングに連れて行ってくれた。


「咲雪、どうした?」

昨日あった事も…全部話した。

「家に帰ろう?心配してるよ?」

皇雅は言う…。

「帰らなくていいじゃない?ゆっくりしていけば?」

「母ちゃん…」

「たまにはいいじゃん‼ねぇ?」

皇雅は困った顔をする。

「部屋に行こ?」

「うん」

皇雅は抱きしめてくれた。

ずっと…何もしないでただ…抱きしめてくれた。


一緒の空間にいるだけでいい。

結婚したいなんて淡い夢を見たりして…。

だから現実にならないかと…

「結婚…したいね…?」

「今は無理でしょ?しかも俺でいいの?」

「皇雅がいい…離れたくない…」

「俺、その内振られると思ってた…」

「嘘でしょ?逆じゃん!」

「わがまま言わないし…咲雪、あっさりしてるから」

「我慢しなきゃ…続けられないじゃん…別れたくなったなんて…絶対言われなくないし…」

「言わないよ…俺は」

それ以上はいいよ…充分だよ…。


嘘つけない目。

見てたらわかるから…。


いつも私を真っ直ぐ見てくれるから。


皇雅がいるから我慢できる…。

あなたは私の最愛の人。
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