雪の華
桜雪

今日は…帰りたくない。


また、会いに来たりして…私が帰った後。


目に見た現実に不安が押し寄せる。


「今日は…帰りたくない…」


「大丈夫だよ…心配ない」


心配だよ…。


心配なんだよ…。


私が大人だったら…自由だったら…良かったのに…。


「送る…」


無言で部屋を出た。

車の中も無言…。

あっという間に着いた家。

灯りが着いていた…。


「今日はありがとう…またね…」

「俺も行くわ」

「何で?」

「一応…謝らないと…」

「いいよ…」

「大丈夫だから…」


「大丈夫…」皇雅は不安がある時「大丈夫」と言う…。

口癖…。


私の独断行動の責任を彼に押し付けてしまった。


大人になるとはこういう事なんだ…。

子供が悪くても責任取らなきゃいけない事…。

迷惑までかけて何してるんだろう…私…。


-ガチャ-


「ただいま…」

「おかえ…あぁ…」

お母さんが皇雅を見て…「ご迷惑おかけしました…」

「あっ…いえ…こちらこそ…すみませんでした…」

と皇雅は頭を下げた。

「いえっ…上がって行きませんか?」

お母さんから意外な一言。

「少し…お邪魔します」


リビングにはお父さんがいた。

どんな反応するんだろう…


「娘がご迷惑おかけしました…」


えっ…嘘…いや、今だけいい人かも…

茉叶の時もそうだったから…


「いえっ…こちらこそすみませんでした…」

「座って…」

「失礼します…」


沈黙が流れる。


お父さんが皇雅に…


「娘と仲良くしてやってほしい…」


えっ…意外な反応…


「はい…僕は咲雪さんの事…本当に好きです。確かに僕もお父さん、お母さんから見たら子供です…だけど、彼女と責任持ってお付き合いさせていただいてます…」


「そうか…俺は最低な親だから、娘をわかってやれないから…すぐカッとなってしまうから…本当に言いたい事はそんな事じゃないんだけど…」

そう言うお父さんはやっぱりいつもと違う。

「はぁ…」

反応に困っている…。

お母さんは…

「私だってお父さんと大恋愛だったのよ」

お父さんはテレながら…

「やめなさい…」

「いいじゃない…本当の事だもん」

楽しそうなお母さん…久しぶりに見た。

なぜか…嬉しい。

「私たち、高校生から付き合ってたの」

その言葉に驚きすぎて…

「えぇぇ‼」

一人、叫んでしまった。

「そんなに驚く事ないだろ…」

お父さんはやっぱりテレてる。


「だって…想像できないから…」

苦笑いしてしまった。


お母さんは…

「ばあちゃん私に厳しかったから…色々大変だった…結婚する時もね…だからお父さんはお母さんと結婚するために…大学行って努力して…今の会社に入ったの…」


お父さんがこだわる「学歴」への執着はおばあちゃんだった。


お母さんとの関係を認めてもらいたくて努力したお父さんはスゴイね…。


今ではエリートサラリーマンだもんね…


私も冬桜みたいに…冷静になって…皇雅を好き…その気持ちだけで行動してはいけないね…。


私は隣で真剣に話を聞く彼が…大好きだから…迷惑かけてはいけない人だから…。


お父さんは…

「咲雪…お父さんとお母さん…まだ遅くないよな?」

「間に合うよな…親として…仲良くなれるかな?」

私は…

「なれるよ…なろうよ…お父さん…」


お父さんもお母さんも…泣いてた。

届いた…私の気持ち。


なぜか…皇雅も泣いてた…優しいね…


「皇雅くん、いつでも遊びにおいで…夜に会う時は、11時までには咲雪を帰してほしい…」


「わかりました…」


この日をきっかけにコソコソ会うのはやめた。

相変わらず成績に関してはうるさい…

だけど、前みたいにお説教はしなくなった。


「お母さん…行ってくる」

「11時までね?」

「わかった‼じゃあ」

「うん」


ネックレスも直った。

あの日から1ヵ月…。

冷静になって、行動している。


だけどね…だけど…こんな幸せな日は長くは続かない。


どうして…?


皇雅は私を一人おいて…どこに行くの?
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