塩顔男子とバツイチ女子



さくら園は五階建て。一階はデイサービスを利用する人達の設備やリハビリの為の療法室、大浴場と調理室がある。二階は事務所とナースステーション、それから大広間。ここがメインの場所だそうで、とにかく広い。大きなテーブルが沢山並んでいて、食事を摂るのはもちろん、グループワークがあったり、入居者さん同士や面会に来る人達がおしゃべりやお茶を楽しんだりしているらしい。窓は全面ガラス張りで見晴らしも良いし、今日みたいに晴れている日は暖かくて気持ち良い。三階からは住居スペース。


「ここ、めっちゃ居心地良さそう」

「ここが気に入って入居した人も多いんだって。日当たりがいいから夏は暑いんだけど、でも私もここが好き。たまにここで話しながら日誌書いてたりするんだ」

「あ、あの人…確かみすみさんのお店で」


一番奥のテーブル。車椅子に乗って、テーブルに何かの雑誌を広げて読んでいる女性。バーベキューに行く事になった日、みすみさんのお店でなつみさんと一緒にいた人だ。みすみさんの長年の友達だという―――。


「山城さん。ばあちゃんの昔からの友達。山城さん、おはよう。午後からOTね」


なつみさんの声に顔を上げた山城さんと目が合った。会釈するとにっこり微笑み返してくれる。


「確かみすみちゃんのお店で会ったわねぇ。なつみちゃんの彼」

「相楽です。お久しぶりです」

「そのエプロンて事はボランティアね?」

「はい。夕方までよろしくお願いします」


隣にいた蒼が肘でドンと突っついてくる。


「みすみさんの友達。前に偶然、みすみさんのお店で会って」

「能瀬蒼くんです。相楽くんの親友」

「能瀬です。見た目はこんなですけどちゃんとやるんで、よろしくお願いします」


蒼の今の髪色は赤にオレンジを強く混ぜたような茶髪。オシャレなんだけどこの色合いはどう表現したらいいのか分からない。
< 136 / 191 >

この作品をシェア

pagetop