塩顔男子とバツイチ女子


それは北斗くんに出会ったから。家は離れているけれど、北斗くんが大学に通っていなければ、私が出戻って来なければ出会う事はなかった。


「離婚するってなった時、お母さんにヤイヤイ言われて圭にも大笑いされて、ずっと肩身が狭かった。圭はちゃんと家業継いで家族を養って、香ちゃんも子育てしながら畑手伝って立派なのに…私は浮気された事にも気付かず、しかも相手が妊娠までしてて。今はもう全部笑い話だけど」


今なら誰にでも隠さずに何でも言える。本当の笑い話として。前は、笑うしかないって気持ちでの笑い話だった。


「北斗くんがいつも私の味方で、いつも守ってくれてる。お正月のあの時もそう。私がお母さんに言わなきゃいけない事を北斗くんが全部言って庇ってくれた」

「あの時は腹が立ったわ。物怖じしないでズバズバ言ってくるし、正論で返してくるから。もっと相応しい人がいるって言えば、相応しいって何ですかって言うし、歳は関係ない、離婚はなつみが悪いとは思わない、歳を取るから出来る経験もある。バツがついてるのは悪い事なのか?周りから何を言われても守ってあげるのがお母さんなんじゃないか?なつみを否定するような事を言うな。挙句に、世間体となつみ、どっちが大事なのか?なんて言うのよ」

「お姉ちゃんの彼氏、めっちゃカッコイイ!男だわ~。私が言った通りの彼氏が出来たね。お姉ちゃんの事が好きで好きでたまらない♡って人じゃん」


そういえばそんな事を言われたような。香ちゃんは顔をくしゃくしゃにしてキャーキャー言っている。


「離婚して出戻って来るなんて恥ずかしいと思ってたわ。もちろん、悪い事をしたのは元旦那だし、なつみは痛い目に遭って可哀想だったけど、でも夫婦はどちらにも理由があると私は思ってる」


それはもっとも。カップルだって別れには必ずお互いの言い分があって、当事者にしか分からないことだらけだ。
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