塩顔男子とバツイチ女子
見た目がどうかなんて自分では分からないけど。それにモテるっていうのとは違うと思う。前になつみさんが言ってた、“大半がミーハー”ってやつ。
あーだこーだと話しているうちに忘れていたけど、振り返るとなつみさんがニコニコしながらおにぎりを焼いてくれていた。
「なつみさん、手伝う事ある?」
「ん?じゃあお味噌つけてもらおうかな。話してなくていいの?みんなと」
スプーンの背を使って味噌をぬっていく。炭火だからちょうどいいおこげが出来ていて、ひっくり返すと味噌の香ばしい匂いがする。
「なつみさん、後でちょっと付き合って」
「どこに?」
「ちょっと先だけど、いいスポットがあるんだ。この前からなつみさんと行きたいと思ってて」
夜勤明けで疲れてるだろうに、こうしてわざわざ俺に付き合ってくれている。元はと言えば俺のついた些細な嘘がキッカケで。
「じゃあさ、おにぎり持って行こうか。そこで食べれる?」
「食べれます。それ賛成」
火のそばにいるからか、なつみさんの頬が少し赤くなってる。
「相楽くん!こっち来て」
「ムリムリ。北斗は今、美白なんてまったく眼中にないから」
「蒼くんムカつく」
「俺はムカつかないよ?全然ムカつかない」
「…二人共、もう付き合えば?」
苦笑いしながら突っ込んだ優斗に、二人は顔を見合わせた。
「絶対嫌!私は相楽くんが好きなの」
「……俺だってこんなうるさい女、お断りだわ」
何とも言えない一瞬の間、蒼は顔面蒼白になりかけた。玉木をまだ好きなんだもんな。
「何だかんだお似合いだと思うけど。なぁ?」
「同感」
隣でなつみさんが笑いを堪えながら小さく頷いていた。