切リ取リマスカ？
☆☆☆

それからもあたしは変わらない日常を過ごしていた。


朝起きて、ご飯を食べて、学校へ行って、勉強をして、紀子や愛と楽しくおしゃべりをする。


そんな日常に変化が出始めたのは事故に遭って入院していた松若琉斗君が教室に戻ってきてからだった。


両足切断と言う大きな人生の節目を経験した松若君だったけれど、車いすに乗った彼はとても元気だった。


「俺、またサッカーやるんだ！！」


両足があった頃サッカー部だった彼は元気いっぱいにそう宣言したのだ。


その宣言を聞いたクラスメートたちはみんな祝福も笑顔も浮かべなかった。


だって、松若君は元々サッカーが苦手でずっとベンチに座っているような選手だったんだから。


そんな彼がそこまでサッカーが好きだなんて、誰も思っていないことだった。


しかし、それに反応したクラスメートが１人だけいた。


松若君と同じサッカー部に所属していた、赤瀬大雅君だ。


赤瀬君は松若君よりもはるかに実力があり、サッカー部では１年生で大きな試合に参加した唯一の選手だった。


そんな彼もまた、今はサッカーをやめていた。


理由はその大きな試合で負けてしまい、ライバルもいない佐原高校のサッカー部ではやる気がでなくなったから。


というものだった。


赤瀬君はサッカーをやめると同時に髪色を明るくし、サッカーでファンになっている女の子たちと遊ぶようになった。


その姿はあっという間に豹変し、今では近寄りがたい存在になっていた。
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