副社長は甘くて強引
「そ、そんなこと聞かれてもわかりません! とにかく近すぎるので離れてください」
副社長の両肩に手をあてると思いきり力を込める。
「嫉妬だとうれしいんだけどな」
彼はポツリとそうつぶやくと、あっさり身を引いた。
「はい?」
「いや、なんでもない」
副社長がなにを言いたいのか私にはわからない。けれど今はそんなこと、気にしていられない。まだドキドキと音を立て続ける鼓動が一刻でも早く鎮まることを願った。
「キミに話しておきたかったのは、これからのことなんだ」
「これからのこと?」
副社長はアタフタしている私のことなどおかまいなしに、本題を切り出してくる。慌てて背筋を伸ばす。
「俺が日本に帰ってくるのは今月の下旬だ。その頃には十二月の販売成績も出ているだろう。だからキミが最下位から脱出できていたらご褒美をあげようと思っている」
「本当ですか!」
「ああ、なにが欲しい?」
『ご褒美』と聞いた私の頭に浮かぶのは、キャビアにフォアグラ、うなぎにフカヒレといった贅沢な食べ物の数々。でも副社長に食いしん坊だと思われるのは恥ずかしいから、言葉にはしない。それよりも私が気になるのは彼の態度だ。