緋女 ~前編~

夜の部屋、その訪問者


レン先生は寮のある棟まできっちり送ってくれた。

その間、特にさっきの話を掘り返すわけでもなく、ただこの学校の話を私にしてくれた。

今日はたくさんのことがあって、理解は追いつかない。



けど、ひとつ分かっているのはケイはそのほとんどを話してくれていなかったってこと。



「えっと……ありがとうございました」


私が笑顔でそうペコリとお礼を言う。

だが、その笑顔がちゃんと見えていたかは私には分からない。どうやら今の時間、この地下空間は夕闇を再現しているようだったから。



特別暗いときの視力がいいなら別だが。



「べっ、別に。教師だからな、当たり前だ」


きっと見えたのだろう。そう言って頬をかく先生は相変わらずチョロい。


そう思って私はこらえきれずに笑ってしまった。


「気を付けるんだぞ。じゃあな」

笑う私から一目散に逃げ出す先生に、また私は笑う。



いい人なんだろうな。



そんなことを心中で呟いても、ただ目の前の女子寮にしりごみして時間稼ぎしているだけのは、自分でも十分なくらい分かってるんだけど。


ほんと、行きたくないな。


「女子の巣窟……」

結局授業まともに受けてないし。いじめられるのはさすがに避けたいんだけど。


まあ行ってみるしかない、か。

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