緋女 ~前編~

知らない部屋、その男。



温かい光が私を包みこむような感覚。

だが、それは私に起きろと告げている。




なんて残酷な心地良さなんだろう。

この光を浴びなければ、ずっと傷つかなくて済むのに。




でもいつか誰かが言ったように時間だけは平等に流れる。

楽しい時間は長くならないし、苦しい時間はなくならない。



___私が大嫌いな朝も。



いつもはこの光の感覚に仕方なく起きるのだが、今日は布団を引いてベットの心地良さに身を任せ、もう一度眠りにつこうと、そうなぜか思った___。



いつもよりもなぜか無性に起きたくなかった。

いや、むしろ起きてしまったらいけないような気がどこかでしていた。



布団を引っ張り頭まで布団をかぶろうとする。まるで光を遮りたいような、そんな感じで。


だがそれはかなわなかった。

もう一度布団を引っ張る。


むっ。


むむむむむっ⁉




………布団が重たい。
いくら引っ張っても動かない。


さっきまでの心地良さは吹き飛んで、不快感が襲う。

私はしぶしぶ起き上がった。あくびをしつつ、のびてみる。それから目をこする。




あぁ、いつもの朝の始まりだ。


< 4 / 247 >

この作品をシェア

pagetop