理想の恋じゃないけれど~ホテル・ストーリー~
隣に座ってもよろしいでしょうか?
12月に入ってすぐの週末。
本条結花は、少々着飾ってホテルにやって来た。
豪勢なパーティに参加するつもりだったのだ。

結花は、通りすがりに看板をちらっと見る。
ホテルの入口の看板には、プレミアムとか、ラグジュアリーとか、うたい文句で誤魔化されてるけど、要するに婚活だ。
クリスマスから年末にかけて、独り身ではつらい季節だ。

だから、この時期にパーティに来て、何もしなかったわけじゃありません。
自分が多少の努力したことを、周りに向かって証明しなければならない。

結花は、母に文句を言うかわりに、看板をにらみつけた。

世の中狂ってると思う。
たかが婚活してるって証明書のために、8千円もの大金を払うパーティーが満席だなんて。

正直言って、自分のお金なら、レストランで好きな料理を食べて帰る。
もちろん一人で食べたってかまわない。

聞きたくもない他人の会話に耳を傾け、にこにこ笑って冷え切った料理を食べるなんて、何が楽しいんだろう。
結花は、そうは言いつつも、内心では豪華なパーティーに似合うだけの体験ができたらと結花は期待していた。
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