白い狐は出会いの季節
勉強をしていた教室に戻ると、どっと疲れが溢れた。


「はっ...。はっ...。はぁ。大変...だったね...。」



まだ呼吸が整わず、私は肩で息をした。


真唯の方に目線をやる。



...。




「えぇ。これも無事でしたし。本当にありがとうございます、桜井さん。」



ん?真唯は意外と疲れてない。



やっぱり草食系男子なのは見た目だけなのか?


いや、でもさっき明らかにいじめられっ子だったし。




「ねえ。さっきの男子達って何?どんてん?って言ってたけど、何かのサークル?」



「うーん。少し違いますね。族?組。まぁ、不良グループですね。」



「まさか、本当にいるだなんて...。」



真唯から話は聞いていたけど、実際に会うと怖い。



やっぱりヤンキーとか不良とかには関わりたくない...って思ったのに。



「...桜井さん。ありがとうございました、で済めばいいのですが...。」



真唯は言葉を詰まらせた。


さすがに私でも理解できた。


...嫌な方向に進んでる。






「『曇天』って、知ってますか?」


私は首を横に振った。


確かさっきの男子が言ってたはずだ。


自分達のことを『曇天』だと。


「...ですよね。一応この学校の周りは曇天のシマ...ナワバリ?になってます。あとここの地域のNo.1の実力をもっています。」



「は。」思わず言葉を失った。


No.1?ナンバーワンだって?


「No.1って?え?ナワバリ?」


私の常識とは程遠い言葉が次々と出る。


「...。桜井さんは関わらない方がいい世界の話です。...ごめんなさい。僕のせいで怖い思いをさせてしまって...。」


真唯が頭を下げる。


「いやいやっ!!真唯はなにも悪くないって!悪いのはあの曇天っていう人達でしょ!真唯は謝らなくていいんだよ。」


真唯の肩をつかみ強引に頭を上げさせた。


「...でも。」


真唯は少し泣きそうだった。














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