校庭に置いてきたポニーテールの頃
「……いや、何でもないわ。さて、そろそろ浦東を追い出してくるか」

ヒロが立ち上がったのと同時に、ドームの中から唯が出てきた。


「あー楽しかったー!……あれ、もしかして二人いい感じだった?」

「バーカ。お前だって今、大嶋と二人でいたんじゃねえのか?」

「そうだけど、私らは違うよー」


ヒロの背中を見つめながら、さっき言いかけていた言葉を思い出す。


『宮西って、まだ澤田のことが好きなの?』


……もしかして今、そう聞こうとした?


さっきのヒロの言葉の続きをいくら探してみても、それ以外には思いつかない。


だとしたら、ヒロって本当に私のことが好きなんだろうか。

だって私が澤田のことを好きって、ヒロは知っているのに。


あれ、なんで私が切なくなるんだろう……


胸がきゅーって苦しくなって、私は思わず制服のリボンを握りしめていた。

< 110 / 345 >

この作品をシェア

pagetop