俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集

「恭一君!おかえりなさい!」

満面の笑みでそう迎えてくれた杏に、ドアの中へ押し入って思わず抱きしめた。
後ろでドアの閉まる音がする。


何も言わない俺に「どうしましたか?」なんてオロオロしてるけど、違うんだ。
杏がおかえりって、その一言が無性に嬉しくて。

もう駄目だって思ったんだ。


「杏、ただいま」

杏に抱きついてやっと出た一言に安堵したようにもう一度「おかえりなさい」って。
堪らない。


抱き締めていた手を外して、家のなかであっても手を繋いでリビングまで歩きながらちょっとだけお説教。


「杏?確認せずにドア開けだろ!ちゃんと確認すること!」

「えっ?でももう帰ってくるって言ってたし、下じゃなくてここが鳴ったから恭一君だろうなって……」

「それでも駄目!分かった?」

「はぁーい」


そんなやりとりの最中でさえニコニコと笑みを崩さない杏。
「どうかした?」なんて軽く聞いてみただけなのに、返ってきた台詞にもう押さえることが出来なくて。


「えへへ。こんな風に出迎えてちょっと新婚さん気分で楽しかったんです。彼氏の誕生日を祝うって事も嬉しくて、今日一日中にやにやしちゃってました」


『今日、絶対変な人だって思われてる筈です』なんて付け足して俺の理性を崩壊させる。

< 103 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop