想いはシャンパンの泡とともに
想いはシャンパンの泡とともに



目の前にある蝋燭の炎を、ただひたすら眺めた。

ゆらゆら揺れる炎を見ると落ち着くのは、私の心が揺れているから。まるでそれを象徴するかのように、溶けた蝋が受け皿に落ちていく。

短くなるだけの蝋燭越しに見える席は――空っぽ。そこに座るべき恋人……いいえ、恋人だったカレは来ない。


(やっぱり……彼女を選んだんだ……)


クリスマスイヴにホテルのレストランでサーブした席で一人待ち続ける――店員の気の毒そうな視線を感じて、虚しく寂しい気持ちになるけど。それでも泣くもんか、と歯を食いしばった。


最後の、意地だった。


たとえフラれたことが明白でも、私は惨めではないと。ちっぽけなプライドで顔を上げまっすぐに前を見る。


今まで、私はいつもそうだった。育った環境から卑屈になるあまりに下を見続けたけど、せめて今だけは――背筋を伸ばしてしゃんとしたい。 胸元にあるペンダントを意識しながら。


たとえ生まれて初めての恋人がずっと社長令嬢と二股をしていて、挙げ句の果てに私が捨てられたのだとしても。
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