君のまなざし
笹森さんのおすすめに従い、スーパーの近くのケーキ屋でショートケーキとプリンを買って茉優のマンションへ行く。

「で、買えたの?」
やはりちょっとご機嫌ななめらしい。
ああ、とスーパーのレジ袋とケーキの箱を渡す。

「わぁー、何、なに?ケーキ?」
ケーキの箱を見ただけでぱぁーっと茉優の表情が明るくなる。
笹森さん、さすがです。
心の中で手を合わせた。

ご機嫌になった茉優と寄せ鍋を作り、〆のラーメンまで平らげるともうお腹いっぱい。
俺はデザートのケーキは無理。
茉優は「別腹~」と俺の分までペロリと平らげた。

気を遣ってやれば簡単にご機嫌にもなるのか。
今日は笹森さんに感謝だな。

でも、自分に付き合っている女性がいることを笹森さんに知られた事を憂鬱に感じる自分がいる。

『奥さまか彼女』
できれば知られたくなかったと思ってしまう。

いつからか毎週木曜日の祐也のトレーニング日にふと笹森さんの姿を探してしまう自分がいた。
彼女が店にいるだけで彼女の姿を見るだけで気持ちが高揚する。
これは淡い恋心なんだと思う。

茉優という彼女がいるのに。
笹森さんも子どもがいる人妻だ。





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