君のまなざし

親父とそんな話をしてから2年。両親が離婚して5年。

やはり、母さんの周りにはかなりの男どもが寄って来る。
アラフォーなのにそう見えない若々しい外見と優しさ、その辺の男より男らしいきっぱりとした性格が人を惹きつけるらしい。

鈍感な母さんはその視線にあまり気付いていない。
いや、誘われても社交辞令だと思ってスルーしている。
まぁ、その前にたいてい凌さんが男よけとしてブロックしてるから、母さんは気が付かずに終わるんだけど。

その中で新しく俺のトレーナーになった山口さんが母さんに一目惚れしたらしい。

長身でイケメンなところは親父と同じだけど、山口さんはいつもにこやかでなごみ系。
でも、さすがスポーツトレーナー、素晴らしい筋肉美。
母さんが筋肉好きかは不明だけど、男は惚れるね。

母さんはジムで俺のトレーニングを待っている間、ちらっとフロントにいる山口さんを見ることがあった。
山口さんの方はしょっちゅう母さんを見ていたんだけど。
母さんはたぶん気が付いていない。

凌さんもそれに気が付いて初めはかなり牽制していたけど、どうやら山口さんに合格点を出したようだ。

俺はいつも母さんに守られてきた。
成長して母さんを守る側になると思っていたけど、違った。母さんを好きな男の元に送り出してあげなくては。

お互いに好意を抱いていることはわかっていたから、俺は積極的に山口さんに連絡をして母さんと会う機会を作ってやった。
後は自分たちで頑張ってくれ。

凌さんもどうやら自分の幸せをつかんだらしいし。
俺や親父、凌さん、隼くんのことも気にしなくていいんだ。
母さんにはもう自分の思うまま生きて欲しい。


その後、2人の遠距離恋愛、笹森の会社の株主総会前の騒動、笹森の後継者問題、などいろいろあった。

でも、全て母の持ち前の行動力でねじ伏せたって感じだ。
あの人はきれいな顔して実はかなりの策略家だと思う。



実は俺は小学3年生の時に一度誘拐されかけたことがあった。
でも、事件が起こる前に通りがかりのお兄さんが助けてくれた。
後で知ったけど、そのお兄さんはは親父の指示で警戒していたセキュリティの人だったらしい。

それからしばらく平和だと思っていたけど、俺が中学生になるとまた俺や母さんの周りに会社の関係者がうろつくようになった。
俺たちの持ち株や俺が後継者になるのかどうかを気にしているらしい。
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