聖夜にセレナーデ


「ほら、華波いくぞ。」

「うん!」



エレベーターが上昇していく。

着いた先は最上階。

「春妃、ここって。」

「ん?特別な夜だからいいだろ?」

いいだろって、スイートルームなんですけど。

「俺を誰だと思ってる。
昔と一緒にするな。」

「…そうでした。」

世界一のピアニスト様でしたね。



ーーーーー



「ん、あ、はるひ。」

「どうした?」

「やめ、」

「昔と一緒にするなっていっただろ?
ずっと待ってたんだ。
手加減はしないぞ。」

そう言われて、胸が疼く。

ぎゅーっと抱かれる春妃の腕の中が心地よい。

キスに掬われて身をよじっていた時、

ーーぐう〜〜っ

この場の空気を壊す音が私のお腹から聞こえてきた。

「そういえば、夜何も食べてないんだった。」

申し訳ない、ここまで期待させていたのに。

「フッ。」

そう思って謝ろうとしたんだけど、彼は笑いながら私の服を直してくれた。

「行くぞ。」

「え、どこに?」

「ディナー。どこがいい?」

「…。」

「俺の行きたいところでいいか?」

「うん!ありがとう!」

そう言うと私の手を掴んで引っ張る彼についていく。

ロビーに降りると、自動演奏をしているピアノの横を通り過ぎてドアから外に出る。

街はクリスマス真っ只中。

駅前広場には大きなクリスマスツリー。

沢山のカップルで賑わっている。

イチャイチャしている一組のカップルに偶々目がいっていると、

「もう少し我慢しろな。
まずは腹ごしらえだろ?」

なんて意地悪そうに耳元で囁いて、顔を覗き込んでくる彼に胸は高鳴りっぱなし。

「うん!」

そう答えて、また歩き出す。

キラキラした街の中をこうやって春妃の隣に並んで歩ける日が再びくることをずっと信じて夢見ていた。

辛くて寂しい日々もあったけれど、今隣を歩く彼だって同じ思いを抱えていたんだ。

その事を知ったからこそ、今一緒にいて、気持ちを共有できている事がとても嬉しくて、輝かしいものになってる。

これから先だって、辛い事があるかもしれないけれど、きっと大丈夫だよね。



「ママ、パパ、見て!」

お父さんとお母さんに手を繋がれている女の子が嬉しそうに話しかける光景が見えた。

素敵な家族だなあ。

「華波は何人子供欲しい?」

「うーん、2人かな?」

「少なくないか?
そんなんじゃ思うようにお前を抱けないじゃないか。」

「もう、春妃のバカ!」

「まあ、いいさ。
何人出来たって、一杯愛を注いでやるから。
お前も、子供達もな。
そうだな、カルテット組めるくらいは欲しいよな。」

なんて事を言うんだろう、この人は。

冗談だよ、なんて言ってるけれど、この顔は満更でもない時の顔だ、絶対!

これからもきっとこの人に振り回される。

でも絶対幸せになれる。



だってほら、

「華波、愛してる。」

こんなに愛され、

「私も愛してるよ、春妃。」

こんなに愛しているんだもん。

幸せになれないほうがおかしいでしょ?



ーfin
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