私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜


家に帰宅すると、光二も休暇だったようでリビングで本を読んでいた。


「ああ、おかえり」


「光二~。今日は一日どっかに消えてくれ」


友人に向かってなんてことを言うんだ、この男は。


「断る」


冷たくあしらわれ、源之助は交渉する。


「だって、あずにゃんと久々に二人きりになれそうなんだもん……こうじぃ~」


空気を読むというとこを知らない堅物男は「意味が分からないぞ。ここは共同スペースだったはずだ」とお金を支払っているのになぜ平等に空間を使うことが出来ないのだと眉を顰めた。


「いや、そういうことじゃなくて」


「光二さんは、コーヒーと紅茶どちらがいいですか?」


グタグタしている源之助を無視して、あずさは光二に声をかける。


フリーで働いている吉伸とは異なって、光二はこのB.C. square TOKYOにあるアッパーフロアの住人だ。


アッパーフロアとは、27階から41階にある世界をまたにかける大手企業が導入されているフロアであり、アッパーフロアの平均年収は4000万だとのことだ。


ちなみに、享もアッパーフロアの住人らしい。


源之助や吉伸も桁外れの額を稼いでいるが、光二や享も負けてはいない。


年収450万円でなかなか今の現代の女性にしては稼いでいるなと満足していた自分がちょっとだけ恥ずかしくなる。


「コーヒーをお願いしたい」


「わかりました」


「あずにゃん。俺は?」


「ロイヤルミルクティーですよね?」


毎日淹れているので、嫌でも源之助の好みは覚えている。


「でも、聞いてよ。あずにゃん」


「……源之助さんは何がいいですか?」


「ロイヤルミルクティー」


「……」


そんなやり取りを見て、光二が思い切り噴き出した。


真面目な男が噴き出したのが意外だったのか、驚いていたのは源之助の方だった。



「どうした。光二」


「いや、お前も必死だなと思ってな」


「どういうことだよ」


「必死の頑張りに免じて、部屋にでも行ってやろう。あずささん。後で部屋にコーヒーを持ってきてください」


にやりと笑って真面目な堅物男は空気を読んで、部屋を出ていった。


< 31 / 94 >

この作品をシェア

pagetop