男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

額に汗して働く使用人たちを羨ましく思う。

私も荷物運びを手伝いたい。何時間も座って退屈しているより、どんなに気持ちがいいことだろう……。

そう思っていたら、ラテン語の教師が私の前で足を止め、細長い棒で机をピシピシと叩いた。


「ステファン殿、真面目に学んで下され。
そのようなお調子では、初日から落ちこぼれますぞ?」


学者然りとした見た目の初老の教師は、丸眼鏡の向こうの小さな目を狭めて、蔑むように私を見る。

貴族という肩書きはあっても、中身のない愚かな生き物だと言いたそうな目つきだ。


だって、退屈なんだもん……と心の中で反発しつつも、「すみません」と謝り、開いた教科書を両手に持つ。

すると馬鹿にしたような笑い声が、あちこちから上がった。


私を笑うのは、同じように教育を受けに来た、お坊ちゃまたち四人。

みんなプライドが高く、十六というギリギリの年齢でこの城に来た田舎者の私を、最初から馬鹿にしたような目で見ていた。

特に十一歳から城に来て、もうすぐニ年半になるというビーンシュトック侯爵家のエドガーは、今朝、食事の席で挨拶した私を鼻で笑ってこう言った。


「フォーレル伯爵? 知りませんね。一体どんな、ど田舎から来たのでしょう? 読み書きはできますか?」



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