『コーン』な上司と恋なんて
「そうか……芦原さんには彼氏がいないのか」


今更のように納得がいく。

非常階段で背中に腕をを回した時も肩に手を乗せた時もビクついた。

触られ慣れてない気がした。

彼氏がいるんだろう？…と疑ったけど、実際にはいなかったんだ……。



「プハッ」と笑いそうになって、慌てて口を閉じる。

真剣な表情を見せてる彼女に気づき、いつも真っ直ぐな眼差しをしているな…と思った。


その目の中にいる自分は、いつもどうでもいい嘘ばかり吐いてる。

何処かいい加減にならないとやれない様な時もあって、真っ直ぐと人を見れる芦原が羨ましい。

彼女といると心地いい。

いい意味で期待を裏切ってくれる彼女の言動の一つ一つが面白いと思う。



（言動だけか？人間性も好きなんじゃないのか？）


心の中にいるもう１人の自分が問う。

彼女を俺が好きだとして、それを口に出して信じて貰えるのか？



（また嘘だと疑われるだけだろう）


こんな事ならロトが当たった話を大袈裟にしなければ良かった。

今更あれは嘘だと言っても、芦原は俺を軽蔑するだけだ。



「そうか…」


もう一度同じ言葉を言った。

芦原は俺を睨み、「何度も納得しないでいいです！」と声を上げた。


「悪い」


謝るつもりでそう返したら、ムッと膨れっ面を見せる。

意外にも子供っぽいところがあると知ったら可笑しくなりそうだった。


< 100 / 174 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop