『コーン』な上司と恋なんて
「頭のいいミィなら町から出て行ってもあり得るなと思ったけど、仔猫を生んだ家の近くの屋根で、呑気に眠ってる姿を見つけた時は嬉しかったです」


子猫達はミィの周りにはいなかった。

私には一見、呑気そうに見えてたけど、今思うと仔猫を探し疲れて眠ってたのかもしれない。


「『ミィ』と呼んだら顔を上げてくれました。ゴールドの瞳で私を見つめて、でも知らん顔をして逃げようとしたんです」


慌てて『エサだよ!』とビニール袋を振った。
それまでにも何度かあげてたから、ミィは直ぐに屋根から降りてきた。


「ハグハグと掌の上のフードを食べてるミィが可哀想で堪らなくて、私の家で飼ってあげたいと思ったんです」


掌を丁寧に舌で舐めてくれたミィを抱き上げた。

抵抗もされなかったから、そのまま家に連れて帰った。


「私がミィを連れて戻ると、母は酷い剣幕で怒りました。『誰が面倒を見るの!?』って。だから私、『自分で見る!』と言い張って…」


そう言ったら課長がクスッと笑った。

泣いて潤んでた瞳が細くなって、私はきゅん…と胸が締め付けられた。


「お姉ちゃんが一緒になって『面倒を見るから飼ってあげて!』と言ってくれたんです。それで母も折れて、飼うことを許してくれました」


お姉ちゃんなんて呼び方をしたのは久し振りだ。
大人になってからはずっと、「姉さん」としか呼んでこなかった。


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