契約彼女にした理由

お袋の顔を真っ直ぐに見つめれば、クスクスと笑っているお袋の顔が目に入る。



「学、好きな人でもいるの？」


「………ああ。」


「学、母さんは幸せだよ。確かに一般的には愛人だと言われる関係かもしれない。だけど幸せだよ。」


「愛人なんて………。」


「それでも離れるよりいい。別れて一生会えないよりいい。」


「そんなのは許される事じゃない。お袋もわかってるだろ？」



お袋がそっと目を閉じた。その顔をじっと見つめる。



「許されないのは分かってる。奥様にも申し訳ないって思ってる。」


「だったら別れるべきだったろ？」


「譲れない恋だった。」



閉じていた目を開いたお袋は真っ直ぐに俺を見つめてきた。



「譲れない恋だった。あの人にとっても……私にとっても譲れない恋だった。」


「譲れない恋？」


「私は彼しか愛せない自信があったの。それほど愛してたから………妊娠した時も産む決断しかなかった。」