目を閉じてください
17
「寝てる間に襲うなんて!!最低です!!帰らせてくださいっ!!帰りたい…放して」
身を捩るけれど、抱きすくめられて強引に唇を塞がれる。
「んんっ……」
インターホンが鳴って、ハッとする。
「真部さま??いらっしゃいませんか」
男性の声がした。コンコン、とドアがノックされる。
舌打ちすると、そっと離れた。
「…そのままいろ」
部屋を出ていった。
目を見開いたまま。仰向けになってばくばくする。
「真部さま」私は知ってる。この人を。
でも。
忘れなくちゃいけない。
なら。いっそこのまま。このままでいい。
ぎゅっと唇を噛んで、クローゼットらしい場所を開けて着られそうなものを探すと急いで羽織る。
ざっくりと手櫛で髪を梳かすとドアを開ける。
ふと振り向くと、天井一杯まである曇り汚れひとつない一枚ガラスの向こうに、青い空と地平線まで、広い広いビルの群れが見えた。
―――大都市、東京。
その真ん中にそびえ立つビル。
夜景もきれいなんだろうな。
でも、ここにいる人たちは、見下ろすことを悦(ヨロコ)んでいる。