目を閉じてください
プリンス、といっても本物ではない。
俗称、ニックネームで本業は舞台俳優だ。
彼女が熱狂的なファンなことに妬んだ彼氏への神対応がネットで話題に登り、火が付き始めた頃だった。
そしてそのやり取りも、通訳は介さない。五ヶ国語が堪能だった。
『元気がないね??イツキ。何かあった??』
営業スマイルで受け答えする真部に、何かを感じた王子は、画面越しに心配そうに話し掛ける。
「…何でもないよ」
年下の庶民の女一人に掻き乱されているなど、言えるはずもない。
『失恋でもした??』
「そんな訳ないだろ、はは」
無理をした乾いた笑いも見透かされたようだ。
彼の相談にも少なからず乗ってアイデアを出し合った。
かれこれ3年になるだろうか。伊達に長く仕事をしていない。
『図星だな。ダメだよ素直にならなきゃ。イツキは不器用なんだから。いつもお世話になっているお礼にアドバイスをしてあげる』
「アドバイスねえ…」