EVIDENCE -S-



私の中になかった幸せと言う文字が
君と過ごして私の中で生まれていったのです。
今までの私に無かったものが君と過ごして初めて知りました。こんなにも心地いいものだと言う事を…。





だからとても私も怖かったのです。
時折、彼は何かを隠すように洗面所から出てこない時がありました。私がドアに近付きノックしようとすると「大丈夫…!大丈夫」と言うのです。






私はノックはせずドアに背中をつけて座り、君の微かに漏れる震えた声を聞きながら私は静かに涙を流した。流れてくる涙を拭わずにただ瞼を閉じては開いては遠くの窓を見つめるのだった。






君も同じ事を思っているのだろう
この幸せが幸せすぎて怖くてたまらない事を…
だからこそお互いに「怖い」と言う言葉は言わない、何も無かったように平然を装っていたのです。その言葉を伝えたら終わってしまうんじゃないかと…そう思っていたのでしょう








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