甘い天秤
私は口を開けなかった。


「秀人の気持ちは知っていたから……俺だけが告白して、フェアじゃないと思って……。凛の気持ちもなんとなく分かっていたから、宣戦布告だね」


伊織さん、意外と腹黒い……。


「凛をずっと見てきたからね……。秀人と楽しそうに、秀人だけに向けられる凛の笑顔を自分だけに向けてほしいと、いつも思っていたよ」



そっか……伊織さんも弟と同じ人を好きになって、苦しかったのか……。


私は久しぶりの恋のときめきに困惑して、自分の事しか考えてなかった。


伊織さんも秀人くんも、真剣に私に恋をしてくれているんだ。……私も真剣に答えを出さなくては。


そのあと、伊織さんに言われた事を自分なりに整理して、午後の仕事に没頭した。


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