拝啓、花の小瓶へ。
Chapter_2 夕暮れスイカズラ

夕暮れの教室。
和馬が出て行って、すぐ帰ってきた。

ドアを開けたその顔は泣き出しそうな程歪んでいて、ああ、と誰もが思えるだろう。

「…おかえり」

「フラれた」

「見ればわかるよ」

「悠…俺泣きそう」

「そんなに好きだったの、珍しいね」

「冷めてんなー…慰めろよ」

「頑張ったね、おつかれ」

「つら…ほんとお疲れだよ」

止めたよ?俺

早すぎるでしょって言ったじゃん

好きって友達に伝えて、すぐ告白って…

まあどれ位好きだったかなんて俺は知らないけど。



「あれー、まだ残ってんじゃん!帰んないのー?」

ふと教室の扉が開かれて、あー誰だっけ…ギャル風の子が入ってくる。

「俺、今傷心中…ほっといて…」

真っ赤になった目を隠して和馬が言った。

「えー、なになに?怒られた?」

「違う…フラれた…」

言っちゃっていいのか?悔しさが帰ってきたらしく机をばんばん叩きだした。それ俺の机。


「フラれて腹立ってんの?よくわかんないわー、好きなんでしょ?」

「誰が好きな子に腹立つかよ…自分に立ってんの!」

「怒んないでよ!誰にフラれたの?あ、私?」

「少なくともお前じゃない…ほっとけって…」

「えー。ばいばい悠君、和馬。すぐ帰んなよ!」

和馬がひらひらと手を振る。俺も振っておいた。

「…って、言ってたけど和馬?帰らないの?」

かえる、と呟きながらも顔をあげようとしないので、鞄を持って席を立つ。

「待って置いてくな!待て!」

興味ないふりをしながらも、俺は春川さんが和馬をフったのを疑問に思っていた。

優しくて人気者で、顔もまあいい和馬。

それなりにモテてきた筈だったし、彼からの告白を断ったのはあの子が初めてだし。
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