赤い糸~切れた糸の続き~
しばらく走って、目的地に着いた。

店に入るけど、彰は見つからない。

「いらっしゃいませ~」と店員が迎えてくれた。

「あの~待合せなんですけど…」と私が言うと、

「こちらへどうぞ」と笑顔で案内してくれた。

その席は…四人掛けの囲いのある半個室的なスペース。

そこにいたのは彰と…男性が一人。

「あー来た!」と彰は言うと前の席をすすめた。

私は二人の前に座る形になってしまった。

「遵、この人が話してた、生田羅菜さんだよ!」と彰は隣にいる男性に言った。

その男性はいきなり立ちあがり私に深々と頭を下げるものだから、私もつられて立ち上がってしまい、

どうもと頭を下げていた。

周りの目は気になったもののあまり目立たないのは半個室的なこの席のおかげだろう。

名刺を渡されて驚いた。

私もとっさに名刺を受け取り、慌てて自分のを出してしまった。

そんな私たちを笑いながら、「二人とも~何やってんの?早く座んな」と彰に言われて私たちは座り直した。

大手出版会社の編集者さんである、男性。

高菜 遵(タカナ ジュン)さん。

どうやら彰の担当者らしい。

にしても、随分仲良しよね~この二人…。

「もしかして仕事話でもしてたの?私、邪魔しちゃった?」と私が言うと、

「いえ、違うんです‼実は最近、先生の作品が思うように進まなくて困ってました。いつもは必ず期限前に仕上げてくるのに、今回は全くもって進んでないと。心配で様子を見に行きたいと言ったら、ちょうど今日、貴女と待合せしてるとのことでしたので、是非お会いしたくて…お待ちしてました」と遵さんに言われた。

「お前に逢うと、すごく良い息抜きできるから逢いたくてね~たくさん話聞かせて貰える?遵の同席は気にしなくて良いから」と彰は言った。

私は頷いた。

そして話始めた。他人だからなのか、色んなことをたくさん話せてしまう。

仕事のこと、恋人との関係…先輩の話

ほんとに全部話してしまった。

気づけばアイスコーヒーを飲みきっていた。

彰の相づちは心地よい。

横で遵さんは笑いながら私の話を聞いていた。

時折見せる笑顔はそこらの女性よりずっときれいで思わず見惚れそうになる。

「はぁ、楽しい!で、これからの予定は?」と彰に聞かれた。

「実はまだ決めてない!アレクで勝手気ままな放浪旅しようと思ってたから」と私は言った。

「なら、後ろ乗っけてよ。俺も行き詰まってて困ってたし、一緒に旅しない?」と彰は言った。

良いのかな?こんなナンパみたいな誘いに乗って…。

「良いですね!是非そうしてください‼風をきって色々見て感じると良いもの思い付くかもしれませんよ!」と遵さんに言われたので、OKせざるおえなくなってしまった。

「彼氏になんか言われたら、責任もって弁解するから。それに…」と彰はチラッと遵を見た。

「わかったわ。遵さん、彰お借りしますね」と私は言った。

「先生にとって、素敵な旅になりますように」そう言って微笑む遵さん。

なんて素敵な人…健人くんとは大違いかも。

なんてね。そんなこと言ったら怒られるわね、きっと。

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