Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜

6. 異変



アキが横断歩道でのハプニングで足止めされていた頃…
ハルは、店内で突然起こった異変に狼狽していた。

耳から脳までを支配していた酷いノイズが、だんだんフェイドアウトして行く。

少しだけ肩の力が抜けたハルだったが、ギギギーッと軋むような音を立てて店の奥にある扉が開く音に目を向ける。

すると、そこから全身黒づくめの服をまとった男が数人出て来て、ハルの方へゆっくりと向かって来た。

言いようのないほど不気味な雰囲気に、ハルは席から立ち上がり、ゆっくりと後退りをする。
その背中が何かにぶつかり、ハルは驚いて振り返った。



そこには……、
瑠璃色の瞳をした長身の美しい容貌の男が、ゾクッとするほど冷ややかな表情で立ち、ハルを見下ろしていた。



その目に吸い込まれそうな感覚を覚え、ハルは慌てて離れようとした。
しかし、魔術にかけられたように、その瑠璃色の瞳から目が離せない。

その男が、不敵な笑みを浮かべると、口の端から二本の牙が覗いた。



え?…何だ?…

まさか…ヴァンパイア?!…
嘘だろ?そんなの、映画や空想の中だけの化け物じゃないのかよ…
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