ヴァージンの不埒な欲望

私は『大人の男の人』と、手が触れ合うのが怖い。兄が高校生になった頃から、兄もダメになった。

家族には話していない。これ以上、厄介な子だと思われたくなくて。『相手はよくできたアンドロイド』長年そう思い込む訓練の成果か、今は心の準備ができていれば、少々触れるぐらいは耐えられるようになった。

父は私の前では、固い表情をしている。私も、父の前では自然な表情ができない。

そして、父とあまり話をしなくなった。自分の思いや伝えたい事を、全然言えなくなってしまった。父の顔色を見ながら、受け答えするようになった。

それと比例するように、他人の前でもうまく話せなくなった。

『引っ込み思案で、おとなしい子』

いつしか、そう言われるようになった。

成長するにつれ、これでいいんだと思うようになった。

勉強もスポーツも、どんなにがんばっても私は中の下から上くらいのでき。特に秀でた何かの才能もない。どちらかと言えば不器用だ。

身体もずっと小さくて、身長一五四センチで成長も止まった。『小柄で華奢』私の見た目は、これで十分に説明できる。

顔もどこにでもいそうな、これといって特徴のない顔をしている。幼い頃から、ずっとからかわれ続けている私だが「ブス」と言われた事はあまりなかったはずだ。

『地味』──私をあらわす一番わかりやすい言葉はこれだろう。


< 19 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop