化学反応検知中


電車の中で、俺はずっと落ち着かなかった。


会えるなんて、まだ決まった訳じゃない。

彼女が今どの街にいるのかが分かっただけだ。

それなのにこれ程胸が高まるもんかって、自分自身に驚いた。


会えるかもしれない。

話せるかもしれない。

ただそれだけのことで、俺はこんなになってしまうんだ。


流れていく景色を視界の端に捕らえながら、俺はかばんから携帯電話を取り出す。



To:中田 健人
Subject:無題
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行ってくる。


   -END-



俺は今まで散々逃げてきた。

自分を守る為だけに、散々。


もうこのままじゃ、俺は駄目になる。



携帯電話をかばんにしまって、俺はそっと目を閉じる。

1番に浮かぶのは誰?

そんなの決まってる。

――あの、俺の大好きな笑顔だ。


たくさんの人が乗降するその駅を、俺は柄にもなく駆け抜けた。

彼女がどこにいるかなんて、分かるはずもない。

今もまだいるか。それすら分からない。


だけど俺はただ彼女に会いたい一心で歩みを進めていた。

あの漆黒の瞳を俺に向けてほしい。

その声が、聞きたい。

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