one life
出会ってしまった!?!?
「あなたたちは、今日から5年生です。来年はいよいよ6年生ですよ。このスーパーコースにいるのですから最難関校に進学するのは当たり前……」

あーぁ。

長いよ長い。

毎年カウントダウンのように同じような事ばかり言ってる塾長。

他のパターンは考えられないわけ?

私はテキトーにやってテキトーに中学校に進めればそれでいいんですけど。

この塾は小2の時に受けるテストの結果でコース分けされる。

その頃はママの言いなりになって勉強していたので一番上のスーパーコースに入れてしまったというわけだ。

スーパーコースだけはスーパーコース専用の校舎で授業が行われる。

いわゆる、塾の看板生たちだ。

あぁ…。

小2の自分が恨めしい…。

正直私は勉強ばかりで他の同級生のように毎日遊んだりできない生活に嫌気がさしストレスが溜まってはよく家出したりパパと衝突している。

今日だってこんな挨拶どうでもいいから家で寝ていたかったが先生紹介があるから来ただけだ。

「……では、次に今年あなたたちを担当する先生方を紹介します。まずは、算数……今西 勝也先生。」

塾長の紹介と共に入ってきたのはトトロみたいなでかい男の先生。

熱血的な授業をすると有名なこの塾の看板先生だ。

今西先生は塾長から渡されたマイクを断ると大声で言い放った。

「算数兼担任の今西勝也!あだ名は何でもいいぞ!2年間死ぬ気で勉強しろ!」

「うわー…暑苦しい系だね。最悪…。」

隣にいた芽衣が耳打ちしてくる。

「同感。でも、あのセンセーが持った学年はほぼ志望校受かるらしーよ。」

「マジで!?良い先生でよかったぁ!」

「「でた、夏希の真面目っ子!」」

私と芽衣がわざとらしく引いたように大声をあげた。

「そこ!真優と夏希と芽衣か?うるさいぞー!」

うわっ!いきなりの名前呼び!?

初対面なんですけどー!

両隣の芽衣と夏希もそれぞれ驚いたように顔を見合わせている。

ここの塾の先生に名前呼びされるのは普通だが初対面で「ちゃん」を省いて呼ばれるとは思っていなかった。

塾長ですら、「真優ちゃん」と呼んでいるのに。

そもそも初対面なのになぜ名前を知っているのだろう?

いくら夏希ほど真面目じゃないからといってそんな目立つようなことはしていない。

前にいた和樹もそれは疑問に思ったみたいで急に振り向いて小さな声で言った。

「なんであいつ、お前らの名前知ってるんだ?お前らなんかやらかしたのかよ?」

「ちょ、そんなわけないでしょー。私達そんな目立ってないし!」

「あー。成績がか?真面目な夏希はともかく、真優と芽衣は平凡だもんな。」

「まぁ、夏希には到底負けるけど私も芽衣もそんなに悪くないよ!?」

「ストーップ!そろそろ静かにした方がいいんじゃない?和樹も前向かないと今西先生がこっち睨んでるよ。」

夏希に言われて前を向くと、今西先生がこっちを睨みつけてた。

あのサイズで睨まれると怖いっ!

これから1年間あの先生かぁ…。

気が引けるなぁ。

テスト悪かったら殺されそうだし小5とゆうのもあって今まで通りゆるゆるだといけないんだろうなぁ。

「では次、国語の上石先生。」

お、今西先生のミニ版みたいなのが入ってきたよ。

「上石です。みんな、よろしく。」

あれ、挨拶短い。

あ、今西先生が長すぎて時間やばいんだね。

「次理科、大里先生。」

お、背が高い!

細くて背が高いダンディーなおじさまって感じだ。

「最後社会科、石谷先生。」

「石谷。よろしく。ついてこれない者や、やる気のない者は未練なく切り捨てる。先程の今西先生の挨拶の時も騒いでばかりで聞いてなかっただろ。人の話は静かにちゃんと聞くことぐらい幼稚園で習っただろ。」

うわ、無愛想!

すごく不機嫌そう。

しかも、私達の方を見てるし!

早々目をつけられた!?

最悪……。

それにしても石谷先生の挨拶聞いてからみんな凍りついた表情で背筋伸ばして固まってるよ。

もちろん、私語する子なんてゼロ。

この先生とも2年間一緒か…。

ますます気が引けるよ。

このあと教材の説明があって今日はおしまい。
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