ただ、守りたい命だったから
今日はきぃちゃんから、通訳の仕事を元々頼まれていて断れなかった。

櫂琉に慈季を預ける予定だったんだけど。

運悪く櫂琉が熱を出し、急遽戦線離脱。

今の時期はきぃちゃんの仕事は忙しくて、当然薺も仕事だ。

しょうがなく、初めてベビーシッターを頼んだのが、事の始まり。

三時間程して、やっと家に戻れた。

櫂琉は二階で寝ているから、少し時間のあいた薺と買い物をして、クルマで帰って来た。

荷物をおろしてる薺を見ながら、慈季が心配でしょうがなかった私は先に家に入る。

その時だった。

「ギャーギャーうるさいのよ!ほんと可愛くない子ね!いい加減泣き止みなさいよっ!」

ゴツッ!

罵声と鈍い音。

走ってリビングに行くと。

床に倒れ、頭から血を流す我が子。

『慈季っ!!』

「慈季っ!」

私と同時に二階からおりてきた櫂琉と、声が重なる。

血がベットリと掌につき、一気に床にも広がっていく。

血の気がひくとはこの事だろう。

『櫂琉っ、救急車!』

「かけてる!」

櫂琉はもうレスキューと話している。

「どうした?」

そこに何も知らない薺が、荷物を持って入ってきた。

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