そのイケメン、オタクですから!

2

「お帰りなさいませぇ、ご主人様。お嬢様!」

無情にも自動ドアが開いて、リリとルルが顔を出した。
二人とも「え?」って顔をしたけど、先輩がセノジュンレッドだとも気づいていないんだろう。

迷ったように目を泳がせた二人に「先輩、私こんなところに来たの、初めてです!」と大きな声でアピールする。

察しのいい二人は何も言わず「ご案内しまぁす」と端の席に案内してくれた。

更衣室には留愛の格好で入るんだから、バイトの皆は当然私がナナだって事をわかっている。
出てきたのがリリとルルで良かった。

店長だったらきっと「あらナナ。今日はプライベート?」なんてニヤニヤして聞いてくるに違いない。

「み、みんな可愛いですね」
背中に汗をかきながら先輩に声をかける。

先輩は目を逸らして「お前の方が可愛い」って呟いた。

でも……こでは素直に喜べない。
いつもナナにデレデレしてるくせに。

私達の席を担当するのはリリに決まったらしく大きな目を瞬かせながら彼女がやって来た。
「ご主人様、お嬢様、ご注文はお決まりですか?」

いつもはフリフリみっくちゅじゅーちゅを頼むくせに、先輩はあちゅあちゅホットコーヒーを指さした。私はあちゅあちゅミルクココアを注文する。

「すぐにご用意いたしまぁす」と言ったリリに、先輩が「ナナちゃんは?」と尋ねた。

一瞬リリが固まる。
何て答えたものか悩んでるみたいだ。
そりゃそうだよね……。
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