そのイケメン、オタクですから!
第7章 乗り越える時

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条件付きでアルバイトが許可されたあの日から4ヶ月が過ぎて、夏休みは目前だ。
……期末テストが乗り越えられれば、だけれど。

「お帰りなさいませ、ご主人様ぁ」
バイトは週3日に減らした。

ママは夜の仕事を辞めたけれどホストに通わなくなったから、どうしても私が稼がなくちゃいけないわけじゃない。
だけど私はやっぱりメイドカフェが好きなんだ。

それがわかってるから、及川先輩はいい顔はしないけど反対もしない。

今回のテストで成績を落としたら学校からも先輩からも辞めろって言われるから、ちゃんと勉強だってしてるんだから。
相変わらず苦手の数学と化学、物理は先輩のスパルタ指導に期待ということにする……けどね。

自動ドアが開いて、お馴染みの顔が視界に入った。
うさぎみたいにぴょこぴょこ跳ねて入り口に向かう。

「お帰りなさいませぇ、はるみんご主人様、しんたんご主人様、ともりんご主人様、ゆうぴょんご主人様」

背の順で扉をくぐって、及川先輩が最後に顔を見せた。
テスト前は土日しかバイトできないから、この後デートの約束なんだ。
勉強デート、だけれど。

めいどいんふぁいとの皆は私と及川先輩が付き合ってることを知っているけれど、何も言わない。

私もバイト先では特別扱いはしないし、先輩は目も合わせてくれないんだよね。そのくせ指名だけはしてくれてるみたいで、私は今日もセンターをゲットした。

歌い慣れた曲に油断して考え事をする。

この前の食事は楽しかったな。
高町さんと及川先輩、ママと私。

高町さんは相変わらずつかみどころのない人だけど、ママの事を大切に思っていることだけは感じた。
及川先輩と二人で、難しい話で盛り上がってたのは不思議だったけど。
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