そのイケメン、オタクですから!
そんなに上手くない私の歌、その上聞き飽きたであろうメロディーに掛け声を合わせて満足そうに手拍子する常連様。

スポットライトはこっちに当たってるのに、私には後光がさして見えます!

メイドカフェに同性と来る男の人の種類は二つ。
一つはメイドとどうにかして仲良くなろうと思っている人たち。
メイドを彼女候補とでも思っているみたいで、たとえイケメンでも私の苦手なタイプだ。

そしてもう一つが背のジュンジャーのような方々。
メイドはアイドルであって見たり応援するものと思っている人たち。
セクハラまがいの事は絶対にしないしファンの鏡なんだよね。

ふふ、今日は稼げちゃった。
通帳の印字を思い出してニヤニヤする。

この前テレビで貯金が趣味っていうOLさんを見た。
通帳を眺めながらお酒を飲むのが一番の楽しみだって言ってたけど、ちょっとわかる気がする。

あんな風にはなりたくないし、まだお酒は飲めないけれど。

ほくほくでお客様を送り出して片付けに戻ると、背のジュンジャーのテーブルにスマホが置いてあるのに気が付いた。

取り上げてみると飾り気のない黒いスマホは待ち受けもシンプルで、空みたいな青一色。持ち主を表すような特徴はない。

待ち受けアニメのキャラクターとかじゃないんだ、と思いながら店を出ると、慌てて戻って来たらしきセノジュンレッドが階段を駆け上がってくるのが目に入った。
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