そのイケメン、オタクですから!
この人、誰?

服装はさっき店にいたセノジュンレッドに違いないけど、乱れた髪から覗いた瞳は切れ長で、アイラインを引いたかのようにくっきりした二重。
メガネの鼻当ての跡が付いた鼻筋は通っていて、整った唇が続く。

世間でいう、イケメンというやつだ。
それも、とびきりの。

頬を染めて恥ずかしそうに目を逸らす姿が妙に色っぽい。

「だ、大丈夫ですか……?」
もう一度尋ねられて、やっと我に返った。

「だ、大丈夫です。メガネ本当に弁償しますから。」
「い、いいいです。それ忘れた僕が悪いので。あ、ありがとうございました」

私の手からスマホをひったくるようにして、彼は階段を駆け下りて行った。

そっか。

セノジュンレッドは恥ずかしがり屋で、いつも私と決して目を合わせようとしない。
萌え萌えキューンのドリンク作りの時も、一緒に「萌え萌え」とか言ってくれないんだよね。
そのくせ私の事ばっかり見てる、と思う。

申し訳ないことしちゃったな。
階段には割れたままのメガネが残って、私は店から箒を取って来て片付け始めた。

レンズは完全にダメだけど、フレームは大丈夫みたい。
でもあの様子だとお金は受け取ってもらえなさそうだし、レンズの度数も教えてもらえそうにないよね。

まぁ仕方ない。
いつかちゃんとお詫びしなくちゃ、と思いながらポケットに黒いフレームをしまった。
< 8 / 193 >

この作品をシェア

pagetop