ハナ に アイ を 注ぐ 。
* 別れと出会い






「 なおと、 帰ろ。 」





授業が全て終わり、自教室から出ると他クラスの生徒である植木 結 ( ウエキ ユイ ) がこちらに気が付き、笑顔でそう言ってやって来る。



結は高校1年生の時の同じクラスメイトであり、去年の冬頃から付き合っている直人の彼女である。



「 うん。 帰ろっか。 」



直人はそんな彼女に軽く笑みを浮かべ、止めていた足を再び前に出す。 結もまた、直人の横に並び、歩き始める。




高校2年生になって早1ヶ月が経とうとしている。

既に5月。
ひとつ学年が上がったからといって何かが変わる筈でも無く、実はまだ高校1年生なんじゃないかって錯覚をする時が時たまある。

現に、以前間違えて去年使用していた教室に入ってしまったのだから。



それを結に伝えれば、大声で笑いながら 「 わかるわかる 」なんて言っていた。





絶対にわかっていないと思う。






今日も結は直人の隣で楽しそうに今日あった出来事を話している。
そう、何も変わらない。


だから、錯覚をしてしまうんだ。
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