俺様副社長のとろ甘な業務命令
「まさか、お世話係のお世話する羽目をなるとは思いもしなかったけど」
「お世話って、あの、私」
「昨日のこと、覚えてないなら教えてやってもいいけど、条件がある」
そう言った副社長は、綺麗な顔に妖しい微笑を浮かべる。
近距離で見つめられて、バクッと心臓が緊張の音を立てた。
こんな顔もするんだ。
高鳴る鼓動に包まれながらそう思った。
「条件、とは……」
「これから俺が呼び出したら、すぐに飛んでこい」
「え? それは、どういう」
「そのままの意味だ。朝だろうが夜だろうが、何時でもすぐに来いってこと」
そう言って差し出されたのは、何かのカードキーだった。
意味がわからずじっと凝視してしまう。
「これは……」
「ここの鍵だ」
「えっ? いや、意味がわかりません。どうして私が副社長の家の鍵を」
「持ってないと呼ばれた時に困るだろ」
早く受け取れと言わんばかりに突き出され、ほとんど反射的にカードキーを受け取ってしまった。
混乱という穴に落ちて数分。
とても這い上がれそうにない。
それどころか、底が抜けて更に深くに落ちていっているようだ。
要するに、私はどうやら飲み過ぎて歓迎会の席で潰れ、どういうわけか副社長に介抱されて自宅だというこの場所に連れてこられたということ。
そして、そんなこととも知らずに朝まで爆睡し、今に至る……。
そこまでは混乱していても状況から何とかわかる。
でも、このカードキーを渡されて、呼び出したらすぐに来いと言われているのは理解に苦しむ。
そんな脅しのようなことを、はい、わかりましたと言わないといけないくらい、私は醜態を晒してしまったのだろうか。
記憶がないその部分を教えてもらうには、素直にこの話に従うしかない。
でも……。