私の彼氏は超肉食系

落とし穴

帝都ホテルで昨日食べられなかったケーキと紅茶を堪能していると1時間もせずに彼の母親が到着した。

「全くもう、何で私が『ベティー』のプロデュースなんかしなきゃならないって言うのかしら。ああ、ごめんなさい。」

彼女は到着するなり愚痴を呟きだした。

帝都ホテルは東都ホテルよりも格が幾分上な分だけ週刊誌の記者などは入りづらい環境となっているので安心しているみたい。

「どうしたのです?」

「ああ、貴女になら言っても構わないわね。」

彼が口説いていた『ベティー』という女優から電話が掛かってきて、タイの同国人のコミュニティーで事件のことを知ったらしい。

彼女たちは遠縁にあたるそうで彼が関係を持った女性をタレントして、『ベティー』という女優をその姉としてプロデュースして欲しいと提案してきたそうだ。

「歌手と違って、女優のプロデュースなんて大赤字が前提よ。主演する映画を企画したら出資までしなくちゃいけないのよ。なんで私のコネやお金を使ってあの『ベティー』にそこまでしてあげなくちゃ、いけないのよ!」

「それって、脅迫じゃ。」

思わず私は声の潜める。

他人に聞かれていい話じゃない。

「完全に脅迫よ。『ベティー』も上手く立ち回ったものね。裕也が相手した女の子も何処かの芸能事務所に所属できれば、留学ビザが就労ビザに変わるわ。上手くいけば帰化して日本人になることも可能よ。それを斡旋した『ベティー』も女優として1段階上を目指せるというわけよ。」

彼女は初めこそ声を潜めたものの、怒りで頭が沸騰してきたのか、どんどんと饒舌になっていく。
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