私の彼氏は超肉食系
控え室に戻ると『一条ゆり』は、私に抱きついてくる。

「貴女を選んで本当に良かった。助かったわ。貴女のデビューイメージなんかどうとでもなる。でも、私がコケたら皆コケてしまうものね。」

自分勝手な思いを口にしているが芸能界に興味が無い私にとってはどうでもいい。

     ☆

「あのヤロー! 何が『応援するよ』だ。」

生番組の収録のあと、私が所属する芸能事務所に到着する。

契約書も交わしていないことに気付き、帰り道に立ち寄った。

ここで憤っているのは芸能事務所の社長だ。

『一条ゆり』がプロデュースを行うというのを聞きつけたあのバラエティー番組のプロデューサーが他のタレントを後回しにしてでも、急遽、生番組の収録を行った。

それには『一条ゆり』を動揺させて何かを口走らせ、上手くすれば破滅させて番組を面白くしようという意図があったらしい。

直接、裕也の名前は出なかったが彼の欲望について指摘してきたのだ。

だがその企みは、私自身が泥を被ることで事なきを得た。

彼の母親である女優『一条ゆり』はなんとか、その場を凌げたものの酷く気落ちした様子だった。

ここに来る途中、芸能事務所の社長が宿泊先の東都ホテルまで送っていったのだが、後部座席で私の胸に顔を埋めて泣いていた。

涙で化粧が崩れ落ち、老婆のように見えたほどだった。

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