イジワルな彼と夢みたいな恋を?
転校した身分の人には、後に残された者の苦労なんて知らないだろう。


「…大田、今なんの仕事をしてるんだ?」


そんなに荒れてるのは仕事のせいか?と尋ねられた。


「何もかも……教えるようなことなの?」


一ノ瀬君には関係のないことだよ〜っと言い返した。


「酒グセ悪っ!」

「ええ、ええ。酒グセ悪くてごめんね〜〜っだ!」



最悪の再会だった。

その後、一ノ瀬圭太とどんなやり取りをしたかも記憶には残ってない。


次の日、絵里から話を聞いたところでは、私をタクシーに乗せてくれたのは彼で、心配だから絵里も一緒に帰ってやってくれ…と頼まれたそうだ。



「私はもう少し皆と話したかったのに」


二次会にも出られなかった…と恨み言を言う絵里に、「本当にご迷惑おかけしました」と謝った。

あんな再会になるくらいなら、同窓会には行かなければ良かった。

あれがもしも最後の出会いだとしたら、もう少しくらいは機嫌よく話し相手をしてやれば良かったのかもしれない。


人生において二度、同じ人のことで反省をした翌日には一人暮らしの部屋に戻った。

帰った後で気づいたのは、いつの間にかバッグの隙間に名刺が差し込まれてたこと。


『フリーハウスデザイン 一ノ瀬 圭太』


一級建築士の文字に(さすが)としか言いようがない。

それに比べて自分は、どこまでもやりきれない奴だな…と、酷く落ち込んだ……。


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