続*おやすみを言う前に

「なんやねん、その長ったらしいズボンは。」

「ズボンじゃなくてルームパンツ。」


こちらを一切見ずに答えた麻衣子は、リビングのテーブルに旅行雑誌やパンフレットをいくつか並べた。


事の次第は数分前にさかのぼる。

一泊でどこか旅行でもしようか、という話が出たのが先週だった。しかし、よくよく考えると旅行出来る日程はそんなになかった。

麻衣子の教員採用試験の結果は来月、八月頭に発表され、受かれば八月末の二次試験に進む。もちろん受かると信じているので二次試験の準備も今から進める必要があるが、発表後よりは発表前の方が時間的には余裕がある。

ということで、今月末に旅行を決行することにしたのだ。

急な決定のため今からでも予約の出来る宿を探すのが先決だったので、インターネットの予約サイトでたまたま空きのあった箱根の温泉旅館に予約を入れた。

温泉に行きたいという俺の希望は採用された訳やけど、残念ながら部屋風呂はないらしい。

< 59 / 98 >

この作品をシェア

pagetop