プロポーズは金曜日に
「伊波くんもしかして明日お休み?」


あくびを押し殺し、眠さをごまかすように早口で一息に聞くと、はい、と返ってきた。


「だから全然問題ありません。こっちでやりますか?」

「そうする。ありがと」


というかもうパソコンしまっちゃった、と言うと、電話口で笑う気配がした。


行って起こしてもらう気満々である。


「いいえ。待ってますね」

「うん。じゃあ一回切るね。また後で」

「はい、また後で」


慌ただしく電話を切った。


急いでコートを引っかけて、右ポケットにスマホを突っ込む。


約束したし余裕があるはずだったし、どうしても伊波くんに会いたくて、あんまり急いでいたものだから、帰ってきてそのまま、コートだけ脱いで作業していた。


伊波くんのお家には私が使うものが一通り何でも揃ってるし、いくつか服も置かせてもらってるし、パソコンと仕事鞄さえ忘れなければ何とかなる。


鞄の中身を全然出さずに足元に置いて机で作業していたから、机と自分の周りのものを持てば後は大丈夫だ。


ほとんど走るみたいに玄関に向かい、もどかしく戸締りをして家を出た。
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